13.太陽の吸収スペクトル(=フラウンホーファー線)の観察

太陽スペクトル観察用分光器の製作

 太陽の吸収スペクトル(フラウンホーファー線)を観察したり演示するには,スリットの幅が
小さい精密な分光器や特殊な望遠鏡追尾装置(シーロスタット)を用いるなど,従来はたいへん
大がかりな装置を標準に考えられていましたが,ここでは約200円で作ることができる高性能な
分光器と太陽の吸収スペクトルを簡単に美しく観察する方法を紹介します。その見え方は,直視
分光器(約3万円)をはるかに上回る明瞭さであり,ビデオカメラによるテレビモニターなどへ
の演示も容易に行うことができます。もちろん,太陽以外の光源にも使用できます。

(1)準備物  円筒形の紙筒(賞状入れ)  ダイソー 100円など  2個
     回折格子シート(500本/mm) ケニス教材カタログ(300×150mmで約4000円)
     プリペイドカード 1枚
(2)分光器製作のポイント
  ・筒をつないで全長を約80cmにする・・・見かけのスリット幅を小さくするので、分解能が向
           上する。ビデオカメラで撮影するとき,ズームアップしてもピントが合う。   
  ・回折格子シートは大きめにする・・・・ビデオカメラで撮影しやすい
  ・遮光板を入れる・・・・・・・・・・・筒内反射光をさえぎり、コントラストが向上する

 <図1>       
                                スリット幅は約1mmにする

(3)簡易高性能分光器のしくみ(参考)
 @回折格子 
  1mmに500本の筋が入っているプラスチックを使用します。 
    回折格子にはたくさんのすきまがあって、そこを通過する光が色によって進む方向(強
 められる方向)が異なるようになっています(図2)。
  回折格子を通して光源を見ると、図3のように、光源の両側に虹色のスペクトルを見
 ることができるのです。
                                                                           

  A分光器のしくみ
  分光器では、図3の光源がスリットになります。したがって、この分光器を電球に向
 けると電球のスペクトルが、太陽に向けると太陽のスペクトルを見ることができるわけ
 です。スリットが細いほど分解性能の高いスペクトルを得ることができます。今回製作
 する分光器では、筒の長さを80cmと長くすることで、見かけのスリット幅を細くして
 います。また、遮光板は、スリットを斜めに通って入ってくるじゃまな光が筒内で乱反
 射してくるのをさえぎるはたらきをしています。

(4)太陽の光のスペクトルを観察・演示する方法
  太陽は小さいこと,日周運動で移動していくことから、太陽そのものではなく,太陽
 の光を反射している白い雲に分光器を向けます。(雲粒による反射は「ミー散乱」で,
 波長に依存しない散乱のため,太陽光と同じ色成分を保っています。)
  また,この分光器はテレビのモニターに映すのに適しています。モニター上に波長測
 定用のめもりをはりつけ,2本の吸収線を基準として位置あわせをすると,有効数字3
 桁の精度で各吸収線の波長を読み取ることができます。さらに,赤外線をとらえる撮影
  モードで,近赤外域のスペクトルを観察することもできます。


 (5)太陽の吸収スペクトルとナトリウムランプの輝線スペクトルを同時に演示
   分光器のスリットを半分ほど鏡でさえぎり,Naランプの光を鏡で反射させてスリット
 に取り入れます。
    これによって,太陽の吸収スペクトル中でオレンジ色の所に見られる暗線と,Naラン
 プのオレンジ色の輝線が同じ波長であることを  強い印象をもって観察することができます。


太陽吸収スペクトル(資料)

<資料1 太陽の吸収スペクトル(可視域)>


<資料2 太陽の吸収スペクトル(近赤外域)

 

 
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