201.雲の動きの微速度撮影
(1)雲の動きを地上から観察・撮影する
気象の学習において気象衛星画像の利用も重要な内容となってきていますが、一方で、
地上から雲を観察することも大切な役割をたくさんもっています。
微速度撮影をした雲の動きの映像は、変化がたいへんわかりやすいもので、それだけで
も十分に教材の価値をもっています。ここではさらに、美しく雲の動きを撮影することや、
低気圧などの擾乱の接近・通過に伴う雲の動きを機会を逃さずに撮影することなどについ
ても考えてみたいと思います。
(2)雲の微速度撮影で予想される学習効果
@ゆっくりとしか変化しない雲の発生・消滅や移動を、時間スケールを適切にした映像
を見ることで明確に把握することができる。
A下層・中層・上層という雲の高度を判別しやすくなり、それによって雲の名前(教科
書に出ているような十種雲形)がわかりやすくなる。
B低気圧接近などに伴う雲の動き、雲の種類の変化などをつかみやすくなり、『観天望
気』のような気象学習への親しみ方を導入できる。
C気象衛星画像と地上から見える雲の関係を結びつけやすくなる。
(3)雲の微速度撮影(方法)
@できるだけよいロケーション(郊外にある学校の多くは好条件!)を選び、デジタル
ビデオカメラ・三脚・パソコン・IEEE1394コードを設営する。ビデオカメラからは必
ずテープを出しておくこと(自動的にスタンバイになって電源が落ちることを防ぐた
め)。
バッテリーを充電しておけば電源がとれなくてもよいが、ACアダプターで電源をと
れるとなおよい。屋外の場合、降雨によって雨にぬれないよう、気をつける。
Aほかに準備するものとして、カメラに入射する光量を減らすためのNDフィルターや
青空からの散乱光を減らして雲のコントラストを高めるための偏光フィルター、画角
を広げるワイドコンバージョンレンズなどがあるとなおよい。
Bあらかじめ、インターネット上の各種気象情報サイトなどを利用して、何時頃にどの
ような雲が現れてきそうかをチェックしておくとよい。
C撮影場所、方向、時刻、ビデオカメラのズームの程度、撮影速度などの記録をとる。
Dある程度、雲の発生や変化を予測しながら、構図を決める。地上の風景を一部入れる
と画角や高度角、方向などを把握しやすい映像となる。
Eビデオカメラの設定で、オートフォーカス機能は使わずにマニュアルフォーカスで無
限遠に固定しておく(画面中央部が一様な雲になったり青空になるとピントが合わな
い状態になるため)。明るさは、たいていの場合はオートのままでもよいが、状況に
応じてマニュアルで明るさ調整をする。
F撮影速度の決定
およそ60倍速、2秒ごとに1フレームを撮影するようにする。この撮影速度は感覚的
に適切で、しかも『1分を1秒にしている』というように説明がしやすい。
Gソフト「SlowCAM」
・メニューバー「ファイル」−「保存するファイルを指定」
・メニューバー「設定」−「撮影速度設定」
・メニューバー「キャプチャー」−「キャプチャー開始」
・メニューバー「キャプチャー」−「キャプチャー終了」
(4)雲の動き 撮影例
@「山岳の風下にできる積雲」2005年9月15日9時45分〜60倍速 津市から北の方角を撮影
山岳を越える気流は上下に波打つような進み方をするために、山岳風下の下層の積雲
は回転するような動き方をすることがあり、ロール雲と呼ばれます。積雲は、上昇する
ときに発生し、下降するときに消滅をします。
映像を見る「山岳の風下にできる積雲」
A「台風通過後の雲」2005年9月7日17時20分〜60倍速 津市から北の方角を撮影
台風14号が通過した後、南西風が入ってきたところです。上層は安定化し、下層で積
雲が発生・消滅を繰り返していました。