323.有孔虫化石の顕微鏡観察

(1)有孔虫とは

 有孔虫は、石灰質の殻と仮足をもつ原生動物で、大きさはたいてい1mm以下ですが大きい
ものは5cmていどあり、化石の中には10cm以上のものがあります。「フズリナ(紡錘虫)」
や「カヘイ石(貨幣石)」は、原生では見られない大型の種類です。殻が堆積して石灰岩になっ
ていることもあります。

(2)有孔虫化石の断面観察用プレパラートの作成

 有孔虫類のプレパラート作りにはスンプ法(酸による腐食の速度の違いを利用して、模様の
凹凸を作り、セルロイドフィルムにその印象を写し取る方法)などがありますが、今回は1個
体ずつばらばらに採取された化石(フズリナやカヘイ石)を手に入れて、通常の薄片作りを行
う方法を解説します。フズリナは生存した時代によって形状が違うので、数種類用意して見比
べることも興味深いです。なお、フズリナの場合は断面の取り方で模様が変わって見えます。
できるだけ斜めの断面にならないようにした方がきれいな模様を見ることができます。

@ 電熱器の上でスライドガラスを熱する。
  (注!あまり長く暖めると電熱器からおろしたときにガラスが割れるので注意))
A スライドガラスの上にレークサイトセメントをこすりつけ、融かす。
B スライドガラスを電熱器からおろし、融けたレークサイトセメントの上に化石を載せ圧着
 する。(貨幣石はフズリナに比べてややもろいので、あまり強く押しつけない。)
C 鉄板上にカーボランダム#600〜800をのせ、水を1滴垂らして、その上で研磨する。
  石灰岩なので、簡単に削れるため、ルーペで確認しながら中心の模様が見えそうな所で研
 磨を止め、スライドガラスや手についたカーボランダムをきれいに水で流す。
  このとき、カーボランダムが少しでも残っていると、表面に傷が付くので丁寧に行うこと。
D ガラス板の上でアランダム#2000をのせ、先ほどと同様にみがく。
E 中心が出たら、きれいに洗い、水分を完全に取り去る。
F 電熱器に再び載せ、レークサイトセメントが柔らかくなったら、ピンセットで化石を裏返
 しにして圧着する。貨幣石はこのとき非常に割れやすいので注意する。
G CとDの作業を繰り返す。
H そのままでも、十分検鏡出来るが、表面に傷が付いたり、すでに傷が付いている場合、き
 れいに仕上げ、保存が利くようにキシロールバルサムをマッチ棒のようなもので化石の上に
 つけ、カバーガラスをかける。
※ 研磨を長くやりすぎるて試料がすべてなくなってしまうという失敗をすることがあります。
 研磨を最終的にどの程度まで行うか、次の映像を目安にしてください。
  プレパラートを空の明かりに向けて撮影しています。

 <研磨の確認の映像を見る>

※ 化石の入手先(例)
 大江理工社  〒616-8212 京都市右京区常盤山下町1-110
 Tel 075-873-5520  Fax 075-873-5521   http://oherikosha.ld.infoseek.co.jp/


(3)電子顕微鏡による有孔虫の観察

 参考までに電子顕微鏡をつかって有孔虫の表面を撮影した画像を掲載しておきます。
 左が低倍率、右が高倍率です。