624.ガリレオの望遠鏡

(1)世界天文年とガリレオの望遠鏡

 2009年は、ガリレオ・ガリレイ(1564−1642 イタリア)が自作の望遠鏡で天体観測を行って
からちょうど400年にあたることを記念して、ユネスコの「世界天文年」になりました。
 ガリレオが使っていたような望遠鏡を自作して、当時のガリレオの観測を追体験してみましょう。

(2)ガリレオ式望遠鏡とケプラー式望遠鏡

 レンズを用いた屈折望遠鏡の基本的なタイプには2通りあって、それぞれ「ガリレオ式望遠鏡」、
「ケプラー式望遠鏡」といいます。これらの構造と特徴は以下のようになります。

 <ガリレオ式望遠鏡>
 対物レンズ(凸レンズ)と接眼レンズ(凹レンズ)を組み合わせたもの。
 正立像になる。視野がとても狭い。

  光学系の図


 <ケプラー式望遠鏡>
 対物レンズ(凸レンズ)と接眼レンズ(凸レンズ)を組み合わせたもの。
 倒立像になる。視野が広い。

  光学系の図

(3)ガリレオが使用した望遠鏡の概要
 ガリレオは数十本もの望遠鏡を作りました。倍率は10〜20倍程度で、レンズ面の精度は現在
の眼鏡のレンズと変わらない程度のものだったようです。

(4)身近な材料で作る「ガリレオ式望遠鏡」
<おもな材料>
 凸レンズ(焦点距離60cm〜150cm程度)
   ・・・100円ショップの老眼鏡のレンズ(プラスチック製)など
 凹レンズ(焦点距離数cm程度)・・・100円ショップの双眼鏡接眼レンズなど
 厚みのある紙筒(直径 cm程度 長さは凸レンズの焦点距離くらい)
 厚みのある紙筒(直径  長さ30cm程度)
 すきまテープ、画用紙(黒)、ストロー、紙コップ
  木材(10cm×10cm×1cm程度)、カメラ用三脚
<製作方法(基本)>
@ 凸レンズと凹レンズを組み合わせて遠景がはっきり見えるときの両レンズの間隔を調べる。
A 太い方の紙筒を、@の長さより約15cm程度短い長さに切る。
B 太い方の紙筒の端に凸レンズを接着剤で取り付ける。(穴をあけて針金で固定してもよい。)
C 短い方の筒の端に凹レンズを取り付ける。すき間テープを凹レンズに巻いて筒にちょうどは
 まるようにする。
D 太い筒に細い筒を取り付ける。このとき、すき間テープなどを使って、なめらかに筒の出し
 入れができるようにすること。両レンズの光軸が一致するように留意すること。
E @のときのように遠景にピントを合わせることができることを確認します。
F 木材を図のように組み合わせ、板の底面に直径  mmの穴をあけておき、紙筒を木材にはり
 がねで取り付ける
G 板の底面の穴に三脚ねじでねじ切りをするようにしてねじ溝をつける。  
H ストロー(10cm程度)をはりがねで紙筒に取り付けてファインダーとする。
I カメラ三脚に取り付けて、完成。
<製作方法(散乱光の防止によるコントラストの向上)>
J 画用紙(黒)を長さ20cm程度(もっと長くてもよい)に切って丸め、対物レンズに斜めから
 入る迷光を遮蔽する。(レンズ・フードとする。)
K 筒の内面反射による迷光をふせぐために、接眼筒の先端に直径2cm程度の円形穴をあけた紙を
 取り付ける。
<製作方法(対物レンズの直径を絞る>
L 紙コップの底面に直径3cm程度の円形穴をあけ、フードに差し込んで絞りとする。
※ 絞りを入れると急激に見え方がよくなる(暗くなるが、シャープになり、コントラストが向上、
 色収差が軽減)。絞りすぎると暗くなってしまう。何種類かのしぼりを製作し、最もよく見える
 状態を見つけるとよい。

<観察方法> ※ 絶対に、太陽を望遠鏡で直接見ないこと。
@ 地上の遠景でファインダー(ストロー)を合わせておく。
A ファインダーで対象物を中央に導入し、望遠鏡で観察し、ピントを合わせる。
B 見え方は、視野がたいへん狭く、目の位置を動かすとその周囲を見ることができる。
C 対象物に色がにじんで見える現象は、光学系による色収差のため。これは光が色によって屈折
 率が異なるためにおこるもので、対物レンズの直径を絞る

(5)ガリレオの天体観測を追体験する。
 ガリレオは下記の天体を望遠鏡で観測し、それまで肉眼ではわからなかったことを発見しました。
どのようなことを発見したのでしょうか?
@ 月 ・・・(クレーター。それまで月の表面はつるつるしたものと考えられていた。)
A 木星・・・(4つの衛星が木星のまわりをまわっていること。ガリレオ衛星の発見。)  
B 土星・・・(リングの発見。リングとしては認識できなかったが土星に耳があるように見えた。)
C 天の川・・・(暗い星の大集団であることを発見。)
 ガリレオはこのほか、太陽に黒点があることと、その動きから太陽の自転も発見しています。

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対物レンズ 絞りを入れると暗くなるが、急激にシャープさが増す。 接眼レンズ(凹レンズ)
接眼筒に絞り(筒の内面反射光を遮光)
対物筒と接眼筒 
出し入れでピント合わせ
架台


3本の試作機 (対物レンズの焦点距離が、200cm・100cm・67cmの3種類)