1103.水星の最大離角 (1)水星の最大離角とは 地動説を提唱したコペルニクスが生涯に見ることのなかったという、見ることがレアな水星
ですが、時期と気象条件を選べば、観察の機会はけっこう多くあります。水星は太陽に最も近
い軌道をとる内惑星で、図1のように太陽から最も離れて見える状態を最大離角といい、その
平均の角度は約23°です。ただし、水星の軌道は離心率が0.206と大きいため、最大で28°ほど、 最小で18°ほどと、大きな幅があります。
東方最大離角の時の水星は夕方の西の空で、西方最大離角の時の水星は明け方の東の空で
見ることができます。
*「東方」とは、地球から見て水星が太陽の東側(左側)にあることをいいます。太陽が西に 沈んだ後を水星が追いかけて沈むことになり、「夕方の西空」に見えることになります。 「西方」はその逆で、水星が太陽の西側(右側)にあります。明け方、太陽よりも早く東の空 に水星が姿を現すことになります。
図1 地球の北極方向から見た図
2020年2月11日 夕方の西の空に見えた、東方最大離角付近の水星
(2)水星が最大離角となる時期(2020年〜2030年) 年間におよそ6回の最大離角があります。
東方最大離角 | 西方最大離角 | |
2020年 | 2月10日 6月4日 10月2日 | 3月24日 7月23日 11月1日 |
2021年 | 5月17日 9月14日 | 3月6日 7月5日 10月25日 |
2022年 | 1月7日 4月29日 8月28日 12月22日 | 2月17日 6月17日 10月9日 |
2023年 | 4月12日 8月10日 12月5日 | 1月30日 5月29日 9月22日 |
2024年 | 3月25日 7月22日 11月16日 | 1月13日 5月10日 9月5日 12月25日 |
2025年 | 3月8日 7月4日 10月30日 | 4月22日 8月19日 12月8日 |
2026年 | 2月20日 6月16日 10月12日 | 4月4日 8月2日 11月21日 |
2027年 | 2月3日 5月28日 9月25日 | 3月17日 7月16日 11月4日 |
2028年 | 1月18日 5月9日 9月6日 12月31日 | 2月28日 6月17日 10月18日 |
2029年 | 4月21日 8月20日 12月14日 | 2月9日 6月8日 10月2日 |
2030年 | 4月4日 8月2日 11月27日 | 1月22日 5月21日 9月15日 |
(3)水星が見えやすい季節 最大離角の時期に水星を見つけやすくなりますが、中でも @春分の頃の夕方 と A秋分の頃の明け方 に水星の地平線からの高度が高くなります。これは、天球上における 水星の位置が黄道付近にあり、@Aの時期の黄道は地平線に対して立ち上がった角度にな っているためです(図2)
天の北極の地平高度は、その地点の緯度と同じであり、コペルニクスのいた北緯52°のポー ランドで天の北極は地平線に対して52°の角度になり、それに伴って黄道の傾きは地平線に対 して小さくなります。このため、最大離角時でも、水星は地平線からあまり離れず、見る条件 が日本に比べて良くなかったことが分かります。 また、北極や南極では惑星などの黄道上の天体を見るのはかなり難しいこともわかります。