大気光学現象とその出現頻度

(1)大気光学現象とは

 大気中の水滴や氷晶に太陽や月の光が当たることによって、空にさまざまな幾何学的な形状 の
光を見せることがあり、これらを大気光学現象といいます。  水滴はおもに球形で、氷晶はおもに
六角柱をしています。これらが光を屈折させたり、反射 させることが成因です。代表的なものが水
滴で生じる「虹」ですが、氷晶によって見られる現 象もたくさんあります。このページで、どのような
現象がどの程度の頻度で見られるかを学び、 観察に生かしてください。なお、出現頻度は、一人の
観察者が1年間の日常生活の中で空を意識 して観察する中でその現象を確認した日数を示したも
の(10年間の平均)です。  

(2)水滴で生じる大気光学現象(「主虹」と「副虹」)


 主虹の半径は約42°、副虹の半径は約52°です。次の図のように、水滴がプリズムの役割をして
色が分散し、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の順に並びます。
 主虹では外側が赤色ですが、副虹では色の順序が逆になります。 

 出現頻度は、主虹が6.4日/年、副虹が1.6日/年です。
 次のグラフは、三重県北部で調査した10年間の主虹の月別出現頻度で、11月〜12月に北西の季節
風によってもたらされる時雨(しぐれ)に伴う虹が多く、天気の悪い梅雨や晴天の多い10月、雨でなく雪
が降る2月には虹が少ないことがわかります。




(3)氷晶の屈折による大気光学現象

 次の図は、太陽光で生じる大気光学現象を模式的に示したものです。
 六角柱の形状をした氷晶を光が通過するとき、どの面を通るかによって、プリズムとしての頂角が
60°の場合と90°の場合があり、氷晶60°プリズムによる現象は太陽から22°の場所に、また、
氷晶90°プリズムによる現象は太陽から46°の場所に出現します。



(3)−1 氷晶60°プリズムによる大気光学現象

 次の図は、氷晶が頂角が60°のプリズムの役割をする場合の光路と、各現象の1年あたりの出現頻度、
および、氷晶の形状による空中の安定姿勢の違いを示したものです。


(3)−1−1 「 22°ハロ 」

 「 22°ハロ 」は、太陽を中心とする半径22°の円形になり、定まった安定姿勢をもたない六角柱氷晶に
よって生じます。
 出現頻度は49.2日/年で、4〜6月頃に多く見られます。


(3)−1−2 「 幻日 」

 「 幻日 」は、六角柱の中でも底面に対して高さの短い、六角平板の形状をした氷晶によって生じます。
この結晶の空中での安定姿勢は、底面を水平にするもので、これによって、太陽と同一高度の離角22°
の位置に見られます。


(3)−1−3 「 タンジェントアーク 」・「パリーアーク」・「外接ハロ」

 この3つは、六角柱の中でも底面に比して高さの大きい、鉛筆型の形状をした氷晶によって生じる
ものです。空中での安定姿勢は鉛筆を寝かせた状態であり、このため太陽の上方と下方の離角22°
の位置に見られ、それぞれ、上部タンジェントアーク、下部タンジェントアークと呼ばれます。
 鉛筆を寝かせた状態のうちで(鉛筆を転がすようなイメージ)、六角柱の側面の長方形の面または
その辺が下になる姿勢でわずかに安定度が高くなり、その姿勢の氷晶が多いときに見られるのが
「パリーアーク」です。鉛筆型結晶を寝かせた状態で転がりの自由度が高いとき、全ての姿勢の氷晶
から来る光によって作られているのが「タンジェントアーク」です。
 また、タンジェントアークの形状は、太陽高度によって大きく変化し、太陽高度が高いときには、上部
タンジェントアークと下部タンジェントアークがつながって「外接ハロ」になります。

                タンジェントアーク



                 パリーアーク



                 外接ハロ


  太陽高度の変化に変化に伴う、タンジェントアークから外接ハロへの形状の変化


 パリーアークの太陽高度による形状の変化

 パリーアークは太陽高度が高いときには上に凸、太陽高度が低いときには下に凸(サンベックス型)
の形状になります。



(3)−2 氷晶90°プリズムによる大気光学現象

 次の図は、氷晶が頂角が90°のプリズムの役割をする場合の光路と、氷晶の形状による空中の
安定姿勢の違い、および、、各現象の1年あたりの出現頻度を示したものです。


(3)−2−1 「 環天頂アーク 」

 「 環天頂アーク 」は、六角平板型氷晶の90°面による光の屈折によって見られます。
 太陽の上方46°の高度で現れるため、天頂を取り囲むカーブを描いて見えます。
 氷晶の種類が「 幻日 」と同じなので、「 幻日 」といっしょに現れることもよくあります。


(3)−2−2 「 環水平アーク 」

 「 環水平アーク 」は、「 環天頂アーク 」と同じく、六角平板型氷晶の90°面による光の屈折によって
見られます。太陽の下方46°の高度で、地平線に平行に現れます。
 環水平アークが洗われるには太陽高度が46°よりも高いことが必要で、4月〜9月上旬に限られます。


(3)−2−3 「 ラテラルアーク 」

 太陽の上方46°の点で太陽を囲む円と接するカーブで現れる「上部ラテラルアーク」と、太陽の下方
に現れる下部ラテラルアークがあります。鉛筆型氷晶の90°面の光の屈折によって生じるので、タン
ジェントアークといっしょに現ることがよくあります。また、ラテラルアークは太陽高度によって形状が変
化します。
              上部ラテラルアーク


               下部ラテラルアーク


(4)氷晶の反射による大気光学現象

 氷晶の平面による光の反射で見られる現象もいくつかあります。反射の際は光の分散は起こらず、
色のスペクトルを生じません。


(4)−1 「 太陽柱(サンピラー) 」



(4)−2 「 幻日環 」

 六角平板または鉛筆型の氷晶による光の反射です。
 太陽と同じ高度で天頂を中心にぐるっと一周を取り囲むこともあります。


(4)−3 「 120°幻日 」

 六角平板結晶の側面2回の反射で生じます。
 幻日環の上で、太陽から方位角120°離れた2カ所に生じます。



(5)ピラミダル氷晶による大気光学現象

 太陽を中心とする半径9°の円形に生じるハロです。ピラミダルと呼ばれる特殊な形状の氷晶によって
できる、かなりレアなハロです。


(6)月光で生じる大気光学現象

 太陽光だけでなく、月光によっても同様の大気光学現象が生じます。満月に近い月であることや
夜間に観測する必要があるため、日常生活における目撃頻度は低くなります。


                 月光による22°ハロ


                   幻月


               月光によるタンジェントアーク


                  月光による環天頂アーク


               月光によるラテラルアーク



(7) 大気光学現象の月別出現頻度(10年間の統計から)

 次のグラフは、主な大気光学現象の月別出現頻度を10年間の平均で示したものです。
 22°ハロが4〜6月に多く出現する特徴があります。


(8) 大気光学現象のまとめ−観察のポイント−

 おもな大気光学現象の出現頻度と、成因となる氷晶、見える位置などを表にまとめました。
 空をよく観察していると、「虹」よりも高い頻度で見られる現象がいくつもあることがわかります。