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2007年7月
     
      「天気輪の柱」
 (桑名市 8:30)

− マルチディスプレイ・ハロ −
 
     宮沢賢治の少年小説「銀河鉄道の夜」に、『天気輪の柱』というなぞの言葉が登場します。
     文庫本のあとがきには、”天気を占う道具”という説が書かれ、Wikipediaには、太陽柱がモデルと
     いう説の有ることが書かれています。
     これについて自分は、『天気輪』が、「暈(かさ、22°ハロ)」をさし、賢治が暈を見るときに太陽を隠す
     ために重ねていた樹木か何かの建造物がその『柱』、もしくはwikipediaと同じく、太陽柱をさすと、
     ずっと考えてきました。なぜなら、彼の作品に出てくるふしぎな物たちは、みな、自然科学の実物や
     真理に基づいた豊かな想像力の産物であることと、そして何よりも、いつもフィールドで農業に携わり、
     天気を心配し、それでもつねに科学を楽しむこころを忘れずに持っていた賢治の目に、『天気輪』と
     その『柱』として映っていたのは、これらの「ハロ」だとしか、どうしても思えないのです。
     今朝、暈と太陽柱がいっしょに現れたときには、小説の中で悲しみをこらえてジョバンニ君がやってきた
     『天気輪の柱』のことを、ごく自然に思い浮かべることができました。
     今朝の空には、、『天気輪の柱』(太陽柱、暈)のほかに、幻日、タンジェントアーク、環天頂アーク、
     幻日環がいっしょに見られ、タンジェントアーク以外はやや淡いものでしたが、みごとなハロたちの
     コンプレックス・ディスプレイ(マルチ・ディスプレイ)となりました。
     『天気輪の柱』の正体は、宮沢賢治自身の著作や手記から何かが発見されない限り、なぞに包まれた
     ままなわけですが、今日の写真をご覧になった皆さんにも想像をふくらませていただけたら、
     とてもうれしく思います。
    
< ↓ 画像をクリックして拡大 ↓ >
8:18 18mm
太陽柱・暈・TA・幻日
8:25
タンジェントアーク
8:28
環天頂アークが加わる
8:30 マルチディスプレイ
太陽高度16.9°
(10.5mmトリミング)
8:31
タンジェントアーク
8:32
色がはっきりした
8:55
太陽柱、明るく
8:59
太陽高度21.7°
9:34
太陽高度26.7°
TAが水平に近づき、
幻日環が少し
10:27
その後、高層雲に
おおわれはじめた
8:30 写真解説
(気象庁・東京大・高知大提供のひまわり赤外画像と気象庁・メテオプラネット提供の天気図を合成)
上層雲と中層雲の重なるところが多い。中層雲の切れてた所にハロのチャンスがあった。

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