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2006年11月5日(日)
「『北の海』(井上靖)に登場するW坂」 (石川県金沢市)
 
     小説「北の海」。主人公の洪作が金沢を訪れ、柔道部の杉戸の下宿に向かうシーンがあります。
     「二人は橋を渡ると、かなり急な坂をじぐざぐに登って行った。・・・・・・
      ・・・・・『なんで四高にはいって、こんなに辛い目にあわねばならぬかと、自然に涙が出てくる』」

    というくだりです。
     金沢の町は、犀川と浅野川の河岸段丘面にあり、W坂というのは犀川の桜橋南詰めから段丘を
     ひとつ登る所の崖地形に作られた歩道であることが現地に来てわかりました。
     戦災にあわなかった金沢では、小説の舞台となったこの地のようすが往時のまま変わらぬ姿を
     とどめ、坂を上り終えた段丘上の家並みも、主人公の洪作(ひいては井上靖さん)が転がり込んだ
     家屋がその中にあるのではないかと想像してしまうほどです。
     作品では、柔道をやることに意味を見いだせず、むしろ意味を見いださずに打ち込むことに大きな
     意味を感じさせるような青春の美学が表現されています。
     その美学を何気なく語るために選んだ最高の舞台こそが、ここ、W坂なのです。
     

    
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標識の奥にW坂 3つめの坂を登ると文学碑がある
文学碑 拡大して
読んでください
正面から見上げるW坂
紅葉に彩られ美しい
W坂にある大きな木

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